土という字

館長・総合芸術監督/齋藤豊治(さいとうとよじ) アイススケートの羽生選手がピョンチャンオリンピックで見せた最終演技に入る直前の仕草をご記憶の方も多いと思います。リンクのセンターに立つと、右手の指さきで土という字を自分の身体に書いたのです。まず左肩に指先で軽く触れ、次に右肩まで一本の線を引きました。続いて頭のてっぺんから丹田(おへその9センチぐらい下)まで縦に線を引き、最後に丹田の高さに左から右へ線を引きました。なぜ彼は土という字を書いたのでしょうか。おそらく自分の表現力を高めるために身体を整えたのだと思います。肩の横棒は、歪みのない両肩のチェック。頭からお腹への縦の棒は中心軸のチェック。最後の横棒は下半身の支えのチェックでしょう。実は、この土を書く仕草に入る前にもう一つの感動的なアクションを彼は見せました。両腕を頭の上にあげて円を作り、その後にゆっくりと両腕を下したのです。それは彼が世界と一体化した瞬間と僕には感じられました。 身体を整える事は心を整える事。アスリートから学ぶことは多いですね。