柔らかな呼気

館長の散歩道

皆さんは、スーザン・オズボーンという歌手をご存じでしょうか。その透き通るような美しい歌声に、ヒーリングの女王とも呼ばれている名歌手です。ニューヨークのカーネギーホールでも歌い、街中の路上でも歌うという彼女の人間性に、僕は強く惹かれていました。今から20年ほど前のことですが、スーザンのコンサートが福岡のモモチパレスであると聞いて、勇んで出かけました。場内アナウンスが入って観客の期待が高まる中、いよいよ、スーザンが下手から登場してきました。観客が息を凝らして舞台を見つめていると、スーザンは観客をゆっくりと見渡して、柔らかな微笑みでフッと息を抜きました。その瞬間、客席の観客もつられて同じようにフッと息を抜きました。これがまさに呼吸の同調と言われるもので、スーザンと観客が一体化した瞬間です。観客の肩の力が抜けたその時、一間おいて、彼女はストっとアカペラで「さくら さくら」を歌い始めました。観客はあっという間にスーザンの世界に引き込まれてしまいました。息が詰まっている時は、物事に行き詰っている時です。フッと息を抜いた時に肩の力が抜けて、私が開かれ、相手も開く。思い悩んでいる時こそ、柔らかな呼気を心がけたいものです。