ジャイアンツ

館長の散歩道

暑い暑い夏が過ぎ、芸術の秋が近づいて来ました。作品を創り上げるには、途方も無い時間と労力が必要です。中でも、演出家にとって自分のイメージを具現化してくれる舞台監督は、無くてはならない存在です。美術、衣装、照明、音響などのテクニカルを統括する総責任者だからです。さて、時を遡り、僕が初めて出会ったプロの舞台監督が、高橋さんでした。彼は、がっしりした体格で、みんなからはジャイアンツと呼ばれていました。当時、20代の若者達で結成した「劇団音楽座」の依頼で、東京の烏山区民会館の現場に颯爽と現れたジャイアンツは、僕たち全員を集めて、舞台上に60×40センチほどの木箱を5つ並べました。中身は「色々な釘の箱」「ガムテープやビニテーの箱」「工具やカッターの箱」等〃。そして言いました。「この箱から持っていった物は、使い終わったら必ず元に戻すこと!では仕込み開始!」奇跡が起こりました。信じられないほど短い時間で仕込みが終了したのです。工具を元の場所に戻す事で、物を探すロスタイムをカットしたんですね。まるで魔法のような舞台監督の仕事でした。