話しかけるという事

館長の散歩道

僕の恩師の演出家でコミュニケーション指導者の竹内敏晴先生は、人と人が豊かに繋がる為のワークショップを数多く実践されました。中でも「話しかけのレッスン」は心に残るワークでした。ワークのテーマは「声、言葉は相手の身体に触れる事」です。言葉が身体に触れる?何だかピンと来ないですね。そこで実践です。まず、話し手を1人決めます。他の7人程度は話し手に背中を向けます。そして話し手は中から1人を選んで、短い言葉で話しかけます。自分に話しかけられたと感じた人は手を上げます。自分ではないと感じた人は、他の人や方向を指さします。これを何回か繰り返していくと、話し手の言葉が思い通りに受け手に伝わる瞬間が来ます。そして生きている言葉は、単なる音声が耳に聞こえ来る事とは次元が違う事に気が付きます。今年の1月2日に起きた日航の航空機と海保機追突事故の渦中、JALのCAの皆さんの乗客への話しかけは、まさに人と人を繋ぐ生きた言葉だったのでしょう。マイクが使えない状況になり、メガホンに持ち変えたCAさんからの生の声と言葉が乗客の心と身体に触れ、落ち着かせ、18分間の奇跡が起きたのだと思います。相手の身体に触れる言葉は、AIには真似のできない、人間が持つ声と言葉の贈り物なんですね。